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鹿児島地方裁判所 昭和54年(わ)518号 判決 1980年2月22日

主文

被告人を懲役一年に処する。

訴訟費用は全部被告人の負担とする。

理由

(罪となるべき事実)

被告人は、昭和五二年八月五日名古屋簡易裁判所において無免許、速度違反の各罪で罰金三万三、〇〇〇円に、昭和五三年九月二二日鹿児島地方裁判所において、無免許運転、速度違反、交通事件原票中の「供述書」たる私文書偽造、同行使の各罪で、懲役一年、三年間右刑の執行を猶予する旨の判決言渡を受けた者であるが、右猶予期間中に、さらに、第一、公安委員会の運転免許を受けないで

一  昭和五四年五月二日午後九時三五分ころ、鹿児島市真砂町三七番一号付近道路において、普通乗用自動車を運転し

二  同月一〇日午後四時二〇分ころ、同市郡元一丁目九番二〇号付近道路において、普通貨物自動車(軽四輪)を運転し

三  同年七月六日午後三時三一分ころ、前同道路において、前記普通貨物自動車を運転し

四  同月一九日午前八時五四分ころ、前同道路において、前記普通乗用自動車を運転し

第二、道路標識により車両の通行を禁止した時間内である

一  前記第一の二の日時場所において、前記普通貨物自動車(軽四輪)を運転し

二  前記第一の三の日時場所において、前記普通貨物自動車を運転し

三  前記第一の四の日時場所において、前記普通貨物自動車を運転し

第三、公安委員会の運転免許を有する柴立秋男の氏名を詐称して自己の無免許運転の罪責を免れようと企て、行使の目的をもつてほしいままに

一  前第一の一掲記の道路交通法違反を犯した直後、同違反場所において、鹿児島南警察署司法巡査上東照雄から運転免許証の提示を求められるや、免許証は忘れて来たと偽つて氏名を柴立秋男と名乗り、同巡査が免許証携帯違反として交通事件原票を作成する際、同原票中の道路交通法違反現認報告書記載のとおり違反したことに相違ない旨記載のある供述書欄末尾に柴立秋男と冒書し、もつて柴立秋男作成名義の事実証明に関する文書である供述書一通を偽造したうえ、これをあたかも真正に成立したもののように装つて、即時同所で同巡査に提出して行使し

二  前同様の手段方法で、前第一の二掲記の違反を犯した直後同違反場所において、同違反事実について取調べに当つた前同警察署司法巡査神宮司幸男が、交通事件原票を作成する際、同原票中の供述書欄末尾に前同様柴立秋男と冒書し、もつて柴立秋男作成名義の事実証明に関する文書である供述書一通を偽造したうえ、これをあたかも真正に成立したもののように装つて、即時同所で同巡査に提出して行使し

三  前同様の手段方法で、前第一の三掲記の違反を犯した直後、同違反場所において、同違反事実について取調べに当つた前同警察署司法巡査中村靖博が、交通事件原票を作成する際、同原票中の供述書欄末尾に、前同様柴立秋男と冒書し、もつて柴立秋男作成名義の事実証明に関する文書である供述書一通を偽造したうえ、これをあたかも真正に成立したもののように装つて、即時同所で同巡査に提出して行使し

四  前同様の手段方法で、前第一の四掲記の違反を犯した直後、同違反場所において、同違反事実について取調べに当つた前同警察署司法巡査神宮司幸男が交通事件原票を作成する際、同原票中の供述書欄末尾に、前同様柴立秋男と冒書し、もつて柴立秋男作成名義の事実証明に関する文書である供述書一通を偽造したうえ、これをあたかも真正に成立したもののように装つて、即時同所で同巡査に提出して行使し

たものである。

(証拠の標目)(省略)

(法令の適用)

適条

判示第一の各所為の点 道路交通法六四条、一一八条一項一号

判示第二の各所為の点 同法八条一項、四条一項、一一九条一項第一の二号、同法施行令第一条の二第一項

判示第三の各所為中

私文書偽造の点は 刑法一五九条一項

同行使の点は 同法一六一条一項、一五九条一項

科刑上一罪処理

判示第三の各私文書偽造と同行使との間には手段、結果の関係があるので同法五四条一項後段、一〇条により重いと認める偽造私文書行使罪の刑で処断する。

選択刑

判示第一、第二の各罪につき懲役刑

併合罪処理

刑法四五条前段、四七条本文、一〇条により刑期犯情最も重いと認める判示第三の四の罪の刑に併合加重

訴訟費用の負担

刑事訴訟法一八一条一項本文

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